僕は楽曲の魅力をほとんどメロディと音色だと思っていて、歌詞をほとんど重要なものと思っていない。だけど、『ラブライブ!サンシャイン!!』2期エンディングテーマの「勇気はどこに?君の胸に!」サビ最後の「♪だって目覚めたら違う朝だよ」という歌詞がとても好きで、それは意味がわかって好きとか自分のことをまるで歌ってるとか、似たような体験を思い出すからではない。
なんでかというと、千歌ちゃんがあの力強く真っ直ぐな声で「♪違う朝だよ」と宣言しているから。ただそれだけ。
意味はよくわからない。なんのことを歌っているのかもよくわからない。一般論なのかもしれないし、本編中にこの歌詞に相当する部分があるのかもしれないし、作品全体のテーマを象徴させているのかもしれない。
ただ僕はそういった部分に反応しているから好きなんじゃない。
千歌ちゃんが、みんなからのバトンを受けて(つまりそれはこの言葉を歌うのが千歌ちゃんしかいないということだと思うが、各話バージョンのことを考えるとちょっと違うね)、ここのパートを歌うのだ。まさか「違う」と「千歌」が掛かっているなどというつまらないことではあるまい。
あの声で「♪違う朝だよ」と歌われてしまっては「そうなんだ!違う朝なんだ!」と思う他ない。意味なんてない。ただ言葉だけがぶつかってくる。それがすごくいい。
歌詞を読めば他にいくらでも心を動かされそうな部分はたくさんある。
「♪勇気をだしてみて/本当はこわいよ/僕だって最初からできたワケじゃないよ」
「♪何度だって追いかけようよ 負けないで/失敗なんて誰でもあるよ/夢は消えない 夢は消えない」
「♪だめならまた次の/チャンスをつかみに/駆けだして汗かいて あきらめなきゃいいんだ」
というか、明確に「諦めないで挑戦し続けること」に対する賛歌である。そこには今ひとつ心動かされることはない。正確に言えば、それはアニメでも描いているし知っていて、主題歌でそういったことを歌うのは妥当だなと思う程度である。
歌に心を動かされるのは、だから少なくとも僕の場合、歌詞の意味ではない。この曲の場合は千歌の声そのものだ。「説得力がある」というのはこういうことなのではないかと思った(※)。
しかし、意味ではないとか書いているが、他言語の歌詞であればこれと同じように心動かされることはないであろう。だから実際には意味に感動している。そこから連想する何か物語、という感じじゃなくて、フレーズそのものの力というか、キャッチコピーに近いのかもしれない。
(※)僕はこの「説得力がある」が評論文に出てくると筆者が言語化をサボっているのではないかと思っていた。だが、例えば長渕剛「Captain of the Ship」は長渕以外が歌っても陳腐な歌詞で聴いてられないだろうが、長渕のあの声あの佇まいで歌われてしまっては「そうだよな」と思わざるを得ない。説得力とはこういうことだろうか。