にゃん
本作のポスター・チラシ

夏と冬に開催される日本最大の同人誌即売会であるコミックマーケット。今夏「コミックマーケット96」は迫る東京オリンピックのためか東展示棟は使えず、西展示棟と南展示棟、そして青海展示棟を使っての開催となる。日程も8月9日(金)~12日(月・祝)の4日間、またリストバンドの導入など例年と異なるため、どうなることかと今から期待と若干の不安がある参加者も多いことだろう。さてそのコミックマーケット96で注目の一冊を紹介する。サークル「さとうのまち」新刊『暴力メイド!ことりちゃん』だ。耳を引くタイトルに映画ポスターの意匠を取り入れた表紙・裏表紙から、そのような内容であるか気になるところ。今回は著者のからすまゆうきさんにおすすめのポイントなどを訊きました。

――早速ですが、この『暴力メイド!ことりちゃん』はどのような作品なのですか?

からすま その前にちょっといいですか? この作品は映画仕立てなんですよ。なのでまるであたかも僕が映画監督であったかのようなインタビューに仕立ててもらっていいですか。これが資料です。

――あ、はい。

本作のチラシ裏面

今夏公開注目作の情報が届いた! その名も『暴力メイド!ことりちゃん』。μ’s解散以来初めて俳優として人前に姿を表した南ことりが主演、しかも成人映画とあって別の意味でも期待が高まるというもの。いったいどのような作品なのか。今回は主演の南ことりさんと監督のからすまゆうきさんにお話を伺いました。

――よろしくお願いします。

南ことり、からすまゆうき(以下からすま) よろしくお願いします。

――さて、このインタビューをしている時点ではまだ撮影中とのことですが……。

南ことり そうなんです。最悪ですよ。監督のスケジュール配分が悪いです。

からすま はい。その通りです。

――なので作品を実際に見てお話を訊くことができなくて。

からすま そんなインタビューは世にごまんとありますので、気にせずいつもどおりお願いします。

南ことり おい。開き直るな。

――まず、この映画のアイディアというか着想がどこから湧いたかなど。

からすま ある日降ってきたんですよ「暴力メイド!ことりちゃん」って言葉が。そう、まるで天啓のように。ピカ―ッて。で、そこから話を膨らませていった感じですね。

南ことり 膨らませ方が間違っていませんか?

からすま 当初はコメディータッチを考えていたんです。いろんなことを殴って解決する暴力メイド!って感じで。ただ、僕はよく秋葉原に行くんですが、数年前からいかがわしいお店が増えてきていると思いませんか。呼び込みのお姉ちゃんもよく立っているし。ああいう店ってやっぱり違法な性的サービスがあるのかなって思うじゃないですか。そっち方面を描いたらいいんじゃないかなって思って。そっち方面に話を作っていったら、こんな感じに……。

――なるほど。

からすま 問題がひとつありまして、劇中メイド喫茶風のキャバクラが出てくるんですが、僕はキャバクラに行ったことがないんですよ。だから想像で描いています。あと秋葉原のいかがわしいお店も一度行って雰囲気を掴みたかったんですけど、時間がなくてできなかったですね。

南ことり ぼったくられてすってんてんになって帰ってきたら面白いですけどね。

からすま それは面白いけど、撮影中に行ったら映画が撮れなくなるほど心に傷を負う可能性がありました。

南ことり いま行けばいいんじゃないですか。

からすま それは単純に好奇心としてですよね。つまり面白がっていますよね? もうキャバクラのシーンは撮り終わってるんで、違っていた場合やっちまった感が出てくるじゃないですか。

南ことり 面白いことが起こったらその様子をドキュメンタリー映画にすればいいじゃないですか。監禁とかされたり、あとは交渉を持ちかけられたらいいですよね~。

からすま 面白がっていますよね。

――南さんはどのような経緯でこの映画に出演することになったのですか? 本業は服飾デザイナーと聞いていますが。

南ことり そうですねえ。あっ、そうなんですよ。私デザイナーなんです。だから演技とか全然自信なくて。なのに監督が「スクールアイドルやってたんだからできる!」とか意味分かんないこと言ってきて。

からすま 言いましたっけ。

南ことり で、この『暴力メイド!ことりちゃん』の企画書片手になんかいろいろ言うわけですよ。で、あんまりにも熱心に説明してるのがちょっと可愛く思えてきて。

からすま え?

南ことり というか、憐れに見えてきて。やってあげちゃおうかなって思ったんですよ。

からすま ハハ……。

――つまり、監督の熱意が南さんを動かしたってわけですね!

南ことり そういうことにしておいてください。

からすま トホホー。

――このチラシの裏にヌードの写真がありますが、ヌードなシーンもあるということですか?

南ことり あります。見てください。本当にひどいですよね。せっかくの裸なのに全然いい感じじゃないし。

からすま いい感じとは?

南ことり もっとロマンスがあって、ラヴ(LOVE)な感じです。この映画には全然ロマンスもないし、ラヴもないですよね。

からすま ラヴ……。

南ことり このポスターというかチラシの裏で剥かれている写真が使われてますけど、これを見て期待した人はがっかりするんじゃないですか?

――そうなんですか?

からすま 確かにアダルトビデオみたいなものとは違いますけど、成人映画としてはいい感じなのではないでしょうか。

南ことり う~ん。どうなんですか~? 成人映画だってもっと色っぽいですよ。多分ですけど。この映画は酷薄すぎます。

――ハハハ……。このチラシの裏にあらすじが書いてありますが、あらためて一体どんな話なんですか。

からすま えっ、それがそこに書いてあるんですが……。

南ことり 文章で読むのと、実際に話すのでは違いますから。

からすま そうですか。では話しますけど、まず南ことりちゃんはメイド喫茶に勤めているんですよ。で「ちょっとだけ腕っぷしが強い」んです。そんなことりちゃんが、ある日店にかつて一緒に働いていた女の子が駆け込んでくるんです。その子は別のメイド喫茶に移っていった子なんですけど、その子を追ってヤクザが来店する。これを追い払うんです。その後ヤクザの報復があって、最終的にことりちゃんは店を追われ両親を殺され、ヤクザを殺します。

南ことり ひどい話ですね。ひどい話ですよね?

――え、ええ。南さんは演じる上で気をつけたところなどありますか?

南ことり ないですね。自然体です。

――監督からはなにか演技指導など。

からすま ないですね。南さんは完璧です。

南ことり えヘヘ。

――監督は何に気をつけて撮ったとかありますか。

からすま それはありますよ。まず、この作品に限らずナレーションやモノローグを極力排しています。ああいうの、監督が見る人に向かって語りかける風に感じてうっとおしいと思うんですよ。あと状況を説明するようなセリフもなしです。だから観てて状況がわからないかもしれないんですけど、それでもいいやって思って撮ってますね。わからなくても楽しめればいいんで、楽しめなければそれは残念ですけど。あっでもこれは脚本の話ですね。撮影でいうと、絵コンテに比べて完成したほうでは顔のアップになっているカットが多くて、これはなんでしょうかね。顔が大きく撮りたいから意図的にしてる部分ももちろんありますけど、意図せずアップで撮ってしまうこともよくあります。顔のアップだと背景がわからなくなるんですけどね。やっぱり、顔が観たいですよね。

――訊くのが遅れてしまいましたが、お気に入りのシーン・オススメのシーンなどありますか。

南ことり ……………………。

からすま ないの!?

南ことり よく憶えてないんですよね。

からすま だそうです。トホホ。

南ことり 全シーンがオススメです!!

からすま いいかげんなコメントありがとうございます。僕は最初にヤクザをなぎ倒して親玉と対峙するシーンがよく撮れたと思っています。

南ことり いいかげんではありません。力の入った映画なので全シーンが……。

からすま はいはい。次の質問をどうぞ。

――今作は『スニーカーフューチャーガール』との同時上映となりますね。

からすま これはですね、もともと『暴力メイド!ことりちゃん』があまりにもな内容だったので、これだけを単品で出すのは厳しいなと思ったんですよ。観る人とかじゃなくて僕が。あまりに悲しい話だと思って。だから以前から構想のあった『スニーカーフューチャーガール』を同時上映にしたら面白いんじゃないかと。

南ことり それはよかったです。私もしかしたらこの話いただく時に『暴力メイド!ことりちゃん』『スニーカーフューチャーガール』が一緒にいただいたんですけど、『暴力メイド』だけだったら受けてなかったかもしれないです。

からすま えっ、それは初耳。よかった~両方持っていって。

南ことり 『スニーカーフューチャーガール』ではショートカットなんですよ私。見どころです☆

からすま 実はこれ、タイトルから分かるようにうっちーの「スニーカーフューチャーガール」をモチーフにしていて。この曲の歌詞に《5センチ下から ハイジャンプ!》とあるんですが、これは普段ヒールのある靴を履いてるんじゃないかと思ったわけです。で、普段は仕事でヒールのある靴を履いてるけど、週末ふと、学生時代に買ってあったスニーカーを出して外へ出てみたら違った景色が見えてきた、みたいな。そういうのを、この曲を聞いた時に思い浮かんだんですけど、僕はオシャレに程遠いのでスニーカーもファッションもいい感じにできなくて放ったらかしだったのです。それを今回カップリングでやったらいいんじゃないかと思って。で、オシャレな画を撮る禄さんに監督を頼んだんです。

南ことり 禄さんが監督でよかったです。からすまさんにアレは撮れませんね。

からすま 僕もそう思います。でもこの曲が2015年リリースってことは、4年もアイデアが死蔵されていたわけで。このタイミングで世に出せてよかったです。僕も2年前くらいに知人にファッション誌を手に指南を受けたりしたんですけど。

――結局撮れなかったわけですね。

からすま 上手に撮れる人が撮ったほうがいいテーマがあると思いました。

――では最後に、この映画を見に来るファンへのメッセージを。

からすま その前にいいですか。今回のポスター・チラシはたろーさんにお願いしたんです。なのでこんなに素晴らしいものになっているわけです。実は以前『渡辺の秘密を暴け!桜内』もたろーさんにデザインをお願いしたのですが、その際に、宣伝ツイートでそのことに触れなかったのが申し訳ないなと思っていまして。なので、今回の作品がイケているならそれは150%たろーさんのおかげです!!

南ことり このポスター・チラシの撮影って、本編撮るより前だったんですよ。だからか、今見ると不思議な表情をしていますね。本編ではこういうシーンはないですしね。

からすま 『暴力メイド』というタイトルなのにメイド服で暴力振るってるシーンはないですからね。

南ことり いや、最初にちょっとありましたよ。

からすま そうでしたっけ。

南ことり あります。

からすま だそうです。

――はい。ではファンへのメッセージを。

からすま あっ! そうだ!

――またなにか?

からすま そういえば、この映画のスポットCMをつくったのでちょっと観てくださいよ。

南ことり 本編撮影終わってないのに……?

からすま どうですか!

南ことり ひでー。

――本編に関係ないおもしろ狙ってくるあたり、スーパーファミコン後期やプレイステーション前期のCMを彷彿とさせますね。

南ことり その数百倍性格が悪い!!

――ではあらためて、最後にファンのメッセージを……。

からすま もう言うことは特にないです。面白いので観に来てください。

南ことり ……。ハァ……。ろくでもないCMのせいで気が抜けてしまった……。私の初主演映画となる本作、今まで見せていなかっただろう私のいろんな一面が観られます。劇場で会いましょうね。

からすま そのコメント、予め用意して来ましたね。

南ことり あら、わかりますか?

からすま 急によそ行き顔になったからわかります。

南ことり これが普段の私です。

――ありがとうございます。ところでこの作品名は『暴力メイド!ことりちゃん』で合ってますよね?

からすま ? そうですけど。

――ポスターでは『暴力メイド ことりちゃん』となっていますが。

からすま あらまあ……。ほんとうだ。

南ことり おや?

からすま これは……おそらく表紙をお願いした時点では『!』がなかったんでしょうね。ハハハ。

南ことり 雑だ……。

からすま どちらでもいいですよ。タイトルは本質ではないので。

南ことり タイトルから作品の着想を得たって言ってたじゃないですか!

からすま それはそれです。気にしないで。

からすまゆうき監督(左)、南ことり(右)

<作品紹介>
『暴力メイド!ことりちゃん』
あらすじ:南ことりは秋葉原の老舗メイド喫茶で働く、ちょっとだけ腕っぷしが強い以外はごく普通のメイド。ある日ことりのもとへかつて後輩として働いていたまゆみが逃げ帰ってくる。まゆみを追って来たヤクザを追い返すも……。元μ’sの南ことりを主演に据えて現代社会の性と暴力を鋭く抉り出す大活劇ムービー。

主演:南ことり
監督・脚本:からすまゆうき

『スニーカーフューチャーガール』
あらすじ:ことりちゃんは日々の仕事にクタクタ。でも今度の週末は久しぶりのデートなんだ。お揃いのスニーカーで出かけちゃおう♪ 内田彩のキュートでポップなナンバー「スニーカーフューチャーガール」を題材に、日常の一コマを切り取った短編ムービー。

主演:南ことり
原案:からすまゆうき
監督・脚本:禄

上映:コミックマーケット96 3日目(日)南ヨ02a「Bear Hug」にて
上映日:2019年8月11日(日)

なお、上映日当日は舞台挨拶を予定しています。南ことり、からすまゆうき監督、他が登壇する予定です。こちらもお見逃しなく。